FRAME EXHIBITION展覧会終了
井上信太絵画展「老松/平面」
私が初めて井上信太作品に出逢ったのは、彼がドイツ・デュッセルドルフにアーティスト・イン・レジデンスとして滞在した後「羊飼いプロジェクト」を開始、その成果をキリンプラザ大阪にて発表した1999年のことでした。頭部が奇妙に縮んだひつじ型に切り出された絵画を、さまざまな風景に配置(=放牧)し、それを撮影した写真やそのプロセスを映像作品にするという、それまで見たことのないアイデアと手法にとても驚きました。当時、美術における映像表現の在り方を模索していた私は、この絵画と写真・映像の平面性を鋭く問題化した挑戦的な試みに深く考えさせられました。「うーむ、なるほど…」と唸っていた矢先の2000年、共に卒業した京都精華大学で新設された映像専攻にて、偶然にも同じ非常勤講師として顔を合わせることになりました。その後、静岡や上海の映像プロジェクト(新視角)で舞台や映像・パフォーマンスの共同制作を行う機会にも恵まれ、彼の幅広い才能を目の当たりしながら、そしてコラボレーションはいつも刺激的な体験の連続でした。
描き、組み立て、繋がり、その場が湧き上がる、そして音楽、舞台的なライブ感覚がそれらと融合する井上信太の創作現場は、人類原始の洞窟で行われていたような、未分化な創造世界に直結しているよう感じています。「美術」として括りきれない、そこからはみ出し、溢れたモノ、それを全てすくい上げた総体を最も大切にしてきたのが作家–井上信太だと私は思っています。
林ケイタ(FRAME in VOX)
<作家からのメッセージ>
老松/平面
平面の可能性を探る絵画の行方。
平面の羊を世界中で放牧するプロジェクトや岩手県の防潮堤でのグラフィティー、絶滅危惧種プロジェクト。ワークショップを通してコミュニティアートや衣装、舞台空間を平面をベースに制作する。とにかく平面の向こう側に何かがあると信じて旅をずっと続けて来ました。
老松との出会いは15年前。水都大阪2009のフィナーレで開催した能舞台「水の輪」。その後、能舞台の鏡板に描かれた究極の平面である老松に魅了される。能舞台には、正面背景の「鏡板(かがみいた)」に「影向 ( ようごう ) の松」と呼ばれ る老松を描く伝統の様式があります。これを基本にブルガリア、ルーマニア、フランスや岩手県大船渡、大阪、小豆島、西之島、屋久島など様々な空間で老松を描く。
数年前に脳出血を患い、あちらの世界とこちらの世界を脳内で行き来する事でリアルな死生観を体験。描きたい絵画のモチーフに向こう側の老松があった。
悲しみの老松を描く美術家が模索した老松群をご覧ください。
井上 信太
◎会期中イベント
12月7日(土)15:00~
井上信太トーク(聞き手:林ケイタ)
終了後、作家を交えて「大老松パーティ」あり
◎関連展示
10月19日から12月14日HRD Fine Artにて「井上信太 個展 Shinta Inoue: Paintings」も同時開催中
https://www.facebook.com/events/932556065372984/932558525372738
- 日程
- 2024年12月3日(火)~10日(火)
- 時間
- 12:00~19:00
*12月7日(土)15:00~
井上信太トーク(聞き手:林ケイタ)
終了後、作家を交えて「大老松パーティ」あり - 料金
無料